RAA(Ride Around Aomori)に参加してきました
こんにちは、ベックオンの野村です。前回の投稿でご案内したとおり、アメリカを横断する最も過酷な自転車レースのひとつ、RAAM(Race Across America)に挑戦することになった落合佑介さん。
私は先日、青森で行われたRAAMへの参加権を獲得するためのイベント、RAA(Ride Around Aomori)へ落合さんのサポートクルーとして参加してきました。
RAAはレースではなく、RAAM本戦へ向けてルールやサポートの方法の確認が主な目的で、青森へはライダー以外にも、各地からサポートクルーのメンバーが集まりました。
今回のRAAのコースは、新青森を出発して、時計回りに下北半島を回り、八甲田山、岩木山などの山間部を抜けて、竜飛岬を経由して新青森まで戻る、まさに青森を一周する650kmのルートです。
RAAMへの参加権を得るためにはこのコースを32時間以内にゴールする必要があります。
落合さんの走力なら単独でも完走できることは間違いないのですが、大事な点はRAAMで表彰台を狙うためのチーム作りです。
私たちのチームのメンバーは関西と関東に分かれているため、数か月前からオンラインで打ち合わせを行ってきました。
その中で私の役割はメカニック、チーフメカニックとして落合さんが使用する機材のメンテナンス、超長距離のサイクリングにおいて有効な機材についてアドバイスを提供する事です。
現地へ輸送された自転車の組み立て、点検を行います。機材はトラブルが起こるリスクを最小限に抑えつつ、身体の負担を軽減するように事前に色々な用品を試して選びました。
RAAMは一般的ではないエクストリームなレースだけに、国内で入手できる情報は限られています。前日の夜のブリーフィングでようやくRAA当日のサポート方法の確認が取れました。
その内容をもとに、チーム内で打ち合わせをして、明日のに向けて万全の体制を整えます。
私はホテルの自室に戻った後は、通常のブルベと同じように印刷したキューシートに、各ポイントでのミッションや今回の要であるサポートカーで行う補給ポイントなどを書き込んで、入念に翌日のシミュレーションを行いました。
前日は夜から明け方にかけて雨が降ったようで、どんよりした空模様の中のスタート。
1,000kmや2,000kmは平気で走る猛者達が集まりました。
その中には、1990年代に4回もRAAMを完走している櫻井要さんの姿も…。
スタートしてからしばらくすると、ぽつぽつと降り始めた雨脚は強くなり、午前中は想定よりもしっかりと雨に降られてしまいました。今回、落合さんはメインバイクと登坂区間用のバイクの2台を持ち込んで来ていたので、バイク交換のタイミングでチェーンの掃除と注油を行いました。
その際に驚いたのは、思った以上にチェーンの状態が綺麗だったことです。今回使用したチェーンオイルは、たびたびご紹介する機会のある、ワコーズのチェーンルブリキッドエクストリームです。
前日の点検時に入念に汚れを落としたうえで塗布したおかげか、水滴どころか、リンクからにじみ出る汚れも確認できませんでした。
軽く汚れを落とした後は、上り坂でもグングンとペダルを踏み進んでいく落合さんのペダリングとの相性を考えて、チェーンルブリキッドパワーを注油して仕上げを行います。
ワコーズのチェーンルブリキッドにはエクストリーム、パワー、スピードと3種類のタイプが存在しますが、パワーとスピードは塗布した後の”油膜”の厚さでペダルを回した時の感覚を調整する事ができます。
私はパワーを7、スピードを3の割合で調合したオリジナルルブを使用していますが、私より体格に優れた落合さんの出力を考慮して、パワーのみを注油しました。
お昼過ぎになって天気が回復すると快調に一定のペースを刻んで走る落合さん。
私たちクルーが乗車したサポートカーは、ライダーとつかず離れずの距離を保ちながら、補給の手渡しを行ったり、パンクなどトラブルに備えて、ライダーである落合さんの様子を注視します。
日が暮れて、反射ベストとライトを装備していよいよナイトライドへ突入します。反射ベストは私が考案したランドヌールジレを使用しています。サンボルトのアクセスベストをベースにしているので、フルサイズのベストでありながら、ジャージのバックポケットの荷物の出し入れも容易です。
ナイトライドの経験も豊富な落合さん。
しかしここで大変だったのが、我々サポートクルーの疲労です。
通常のブルベのPCに相当する、TS(タイム ステーション)が設けられており、通過した事を証明する写真を撮影します。
写真を撮影したら、次の瞬間には再スタートを切ってしまう落合さん。
そう、この人はとにかく休まないし、寝ないのです。
我々はトイレに行く隙さえありません。落合さんがトイレ休憩に行くタイミングで一斉にトイレに駆け込みました(笑)
サポートクルーの苦労とは関係なく、終始一定のペースで進む落合さん。夜中に集中力が切れたのか?「何か歌って!」とリクエストされた時は焦って、ヤン坊マー坊のテーマ曲を熱唱するという珍場面もありましたが、あっという間に?ゴールへ到着しました。
タイムは24時間10分。
このタイムでの完走がごく普通の事で、この先の1,000km、2,000kmも休憩をとらずにサポートクルーが引きずり回されると思うと、ゾッとしました(笑)
今回の結果を持って、落合さんはRAAMへの参加権を獲得する事ができました。この後は、来年の6月にアメリカで開催されるRAW(Race Across West)への参加を計画しています。
正直なところ、チームの誰も経験した事のない世界で、RAAMへの参加という事が全く想像できなかったのですが、これから何をすべきか、少し見えてきた気がします。引き続きRANDONNEUR PLUS PROJECT、落合さんのRAAMへの挑戦をサポートしていきます。今後のレポートもお楽しみに、ご期待ください。
そう言えば、完走した後に自転車で八甲田山に上って温泉に行きました。
ロングライドって本当にたいへんたのしいですね(;’∀’)